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元消費者委員会委員、適格消費者団体消費者機構日本理事の唯根妙子さんに聞く!

2023年8月28日

――消費者が公的保険や公的支援制度の情報をよく知らない現状があります。こうした点についてどのような認識を持っていますか?

保険の業界団体、例えば損保分野であれば代協組織の代理店の方々は消費者団体との定期的な情報交換もしていることもあって、真剣に消費者利便のあり方について取り組んでくれていると認識している。

しかし、公的保険や公的支援制度に関する情報提供については「公的保険はこういうものだ」「各自治体が提供している公的支援制度はこうしたものだ」といった基本的な説明にとどまってしまっているのが実情ではないだろうか。

消費者それぞれの状況や環境によって、該当する公的保険や公的支援制度が異なってくるというようなことまで説明してもらえればありがたい。

――一般消費者は必要となる知識を有していないという前提のもとで情報提供を図ることが顧客本位と考えておりますが如何でしょうか?

そのとおりだと思う。行政も保険業界も消費者団体もそれぞれが消費者視点に立って取り組もうと考えてくれているが、互いの取り組みがうまくマッチングできておらず、ためになる情報を消費者に届けきれていない。

例えば、消費者庁は各地域で「見守りネットワーク」という地域協議会を展開している。これは高齢者や障がい者、認知症等により判断力が不十分となった方の消費者被害を防ぐために地方公共団体や地域の関係者が連携して見守り活動を行うというものだが、思うように取り組みが広がっていない。こうしたところにこそ保険業界の皆さんが有用な情報を提供いただければ公的保険や公的支援制度への理解の促進にもつながるのではないか。

――消費者目線でのこうした意見は貴重だと考えています。大きな要因としてはどういった所でしょうか?

行政や自治体も公的保険や公的支援制度については、消費者側から照会があれば教えてくれるし、申請すれば対応してくれるのだが、そもそもこうした制度があること自体を消費者は知らないので照会のしようがない。

私も行政で相談員をしていたので内部のことはよくわかっているが、行政の職員はわずか数年で部署を異動してしまうことが多いため、その業務に携われる時間が限られている。そのため公的保険や公的支援制度の理解促進に努められていないのが実際のところだ。

――消費者、行政、事業者の三方良しの環境を作っていかなければなりません。現状はどうでしょうか?

行政が設ける制度の一つ一つは、とかくわかりにくい。

消費者の立場で考えてみると、何かわかりやすいキャッチフレーズを考えて、それを広めていけば消費者にもわかりやすいだろうし、結果的に関心も持ってくれるのではないだろうか。公的保険や公的支援制度の情報がなかなか消費者に届かないなかで、やはり地域でこれらの情報を届ける、伝える担い手として保険業界とりわけ募集人の方々が適していると思うので、地域での貴重な情報提供源になってもらいたい。