JOA Holding, Corp.

元金融庁特別検査官 成島康宏氏に聞く!

2023年8月22日

――公的保険制度を保険代理店がお客様に説明する際に、お客様が内容を理解しきれていないというケースが散見している。こうした状況のなかで代理店や募集人がお客様に対して公的保険制度を説明することに関する金融庁の考えはどのようなものでしょうか?

一昨年12月に改正された保険会社向けの総合的な監督指針では、顧客に対して公的保険制度等に関する適切な情報提供を行うことなどの改定が行われ、より充実した情報提供を行ってもらいたいというのが金融庁の方針だ。

金融庁が昨年度に実施した保険代理店向けのアンケート・ヒアリングでは公的保険制度に関する項目もある。つまり、現状では金融庁が保険業界に向けて公的保険制度を情報提供しているか、それを踏まえた保険商品の提供をしているかといった実態把握に努めている段階である。

 

――今後も公的保険制度の説明についての当局のスタンスはプリンシプルベースといえるのでしょうか?

やはり今後も当局の方針は、プリンシプルベースによるベストプラクティスの実践を求めるスタンスだと考えている。一時期、特定保険商品(外貨建て保険)の販売に関して顧客から苦情が多く寄せられたが、このように問題が顕在化しなければルールや規制を設けることは難しい。

公的保険の説明に関して消費者から苦情が増加してくるおそれもある。そうなればルールベースや規制に向かう可能性は否定できない。

また、ちょっとしたトピックスとして、昨年に公的保険制度をテーマにしたセミナーの場で登壇した金融庁監督局保険課の担当官が、公的保険制度に関する監督指針を守らなければ厳しい処分があることを示唆するような発言をしたと聞いているので、こうした点は念頭に置いておいてもよいのではないだろうか。

――プリンシプルベースにすることで、いき過ぎの会社を抑制や自制する狙いもあるのかもしれないが、よりよい取り組みを模索する保険会社や代理店に期待するという見方もできるのでしょうか?

ルールベースにしてしまうことで、ともすれば保険会社や代理店がルールさえ守ればよいと思ってしまう可能性もでてくる。そうではなく、プリンシプルベースの観点に基づきどうすればお客様のためになるかという観点での顧客対応ひいては公的保険制度の説明について取り組んでもらいたいというのが当局の考えだといえる。

――公的な保険や支援制度を取り扱っているという意識を持つことが重要という事ですね?

当局や保険会社から言われたからやるという、意識の代理店がいる一方で、自ら公的保険制度について学び、説明に努める意識の高い代理店があるのも事実だ。その意味では(JOAホールディング社が実施している)全国の自治体の公的保険・支援制度を一元的に取りまとめ、地域のお客様にわかりやすく伝えられる仕組みというものは非常に有意義なものだと考えている。

現時点では募集側も顧客側も公的保険制度について十分に理解しているとは言い難い状況にあるので、保険代理店や募集人には公的保険制度をきちんとわかりやすく、顧客に伝えてもらいたいし、それが実践できるためのシステム投資や教育体制整備をして欲しい。